自己紹介はこちら。今回のテーマはこちら。必見、長期投資でリスクは減らない。グラフでわかりやすく解説します。

投資にはリスクがつきものです。自分のリスクにあった投資が大事と聞いたことがあるかもしれません。例えば、「長期投資ならリスクを下げられる」、「株は長く持っていれば負けないから大丈夫」といった意見です。ですが、実は「長期投資ならリスクが下がって安心できる」という考えは間違いです。リスクを誤って理解すると、目的を達成できない可能性があります。

例えば、思っていたよりもリスクが下がらないと値動きに耐えられなくなるでしょう。早々に売ってしまい長期保有できない可能性があります。また、長期保有自体はできたとしても目標を達成できない可能性もあります。例えば、子供の学費に必要な金額が未達となれば、その時になって慌てるでしょう。そこで今日の動画では、長期投資とリスクの関係をグラフでわかりやすく解説します。長期投資で減らせるリスクと減らさないリスクを紹介します。

今日の動画を見れば、リスクの理解が深まるでしょう。思っていたのと違ったと焦ることを減らせます。また、今後投資を勉強していくにあたっても「今はこのリスクのことを話しているんだな」とスッキリ理解できるようになります。そうすれば、間違った理解で投資して失敗することを減らせるでしょう。それでは早速共に学んでいきましょう。

長期投資でリスクは下がる?

株式投資では「長期積立分散」が良いと言われます。書籍やYouTubeでも長期積立分散を推奨するものが増えてきました。また、長期投資でリスクが下がるという説明もよく見かけます。例えば、金融庁のホームページには次のように記載されています。「投資期間が長いことで投資による価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できます」。長期投資は国のお墨付きということもできるでしょう。

名著『ウォール街のランダムウォーカー』にも長期投資でリスクが減ると書かれています。この図は有名なので皆さんも見たことがあるかもしれません。著者のバートン・マルキール氏は次のように言っています。「株式投資のリスクも投資期間に応じて減少するのだろうか?答えはもちろんイエスである。株式を長期間保有し、一度買ったら多少の価格変動があっても持ち続けるという基本方針を貫けばリスクのかなりの部分を減らすことができる」。

一方で、長期投資でもリスクは減らないという意見もあります。例えば楽天証券の客員研究員である山崎元氏は次のように言っています。「長期投資ではリスクが縮小するとする説明は誤りである。投資期間が長期化するとリスクは拡大するが正しい認識だ」。マルキール氏も山崎氏も著名な経済の専門家です。ですが、長期投資とリスクについて2人の意見は異なります。投資期間が長期化するとリスクは減少する。投資期間が長期化するとリスクは拡大する。全く反対の意見ですね。

これは私たち投資家にとって大きな問題です。長期投資ならリスクが下がると思っていたのに、本当はリスクが下がらない。そうなれば安心して長期投資をすることができません。日々の値動きが気になって耐えられずに手放してしまう可能性があります。「リスクは減るのかい減らないのかいどっちなんだい」ということです。

結論から言うと、リスクという言葉にはいくつかの意味があります。その中で長期投資で減るリスクと減らないリスクがあります。ここからは投資におけるいくつかのリスクについて長期投資との関係を紹介します。紹介するリスクは次の4つです。

年率リターンのばらつき

マルキール氏の言うリスクは年率リターンのばらつきです。株式を数年間保有したとき、1年あたりのリターンはどの程度になったかという意味です。こちらのグラフをご覧ください。この図は保有期間ごとに年率リターンをまとめています。

例えば1年間保有した場合を見てみましょう。成績の良かった1年間は資産が52%も増えました。一方で成績の悪かった1年間は37%も減りました。平均値で見ると資産は10%の増加です。ですがばらつきが大きすぎて平均をあまり信用できません。株を1年間保有したらどの程度のリターンになったかと聞かれてもブレが大きくて答えにくいということです。保有期間が同じでもいつ投資するかによってリターンはかなりバラついたと言えるでしょう。

一方で、保有期間が長くなるほど年率リターンのばらつきは小さくなります。1年しか保有しない場合、最大リターンと最小リターンの差は90%もありました。一方、25年間保有した場合、差は11%しかありません。最も良い時でも資産は1年あたり17%しか増えず、最も悪い時でも6%増えています。1年あたりの投資リターンは長期投資になるほど平均値に収束するということです。

これがマルキール氏の言う「長期投資でリスクは減る」という言葉の意味です。ただし、マルチール氏のグラフは分かりやすいですが注意点もあります。詳しい分布がわからないという点です。最大最小平均を示されていますが、その中の分布がどのようになっているかは分かりません。

そこで詳細をさらに分かりやすくするため図を用意しました。この図はS&P500の過去データから作った保有期間ごとの年率リターンの分布です。1928年から2021年まで94年分のデータです。分配金とインフレは考慮しておらず、値上がり益のみのリターンになります。

まずは保有期間が1年の場合をご覧ください。この分布は横軸が年率リターン、縦軸がその年率リターンに該当した期間の頻度を示しています。保有期間が1年の場合、年率リターンの平均値は8%でした。ですが、ばらつきが大きいです。間でプラス50%になった年もあります。これは平均値よりも42%大きいです。逆にある年はマイナス50%になりました。これは平均値よりも58%小さいです。最も良かった年と最も悪かった年を比べると100%も違います。1年で1.5倍に増えた年もあれば、半分に減った年もあるということです。

結果として年率リターンは全体に幅広くばらついています。分布の形は平べったい丘のようになりました。保有期間が1年の場合、年率リターンは平均値から乖離することも多いということです。保有期間が5年になると少し様子が変わります。平均値は大きく変わりません。一番高い棒の位置で6.4%です。一方でばらつきはかなり小さくなりました。横の広がりが小さくなっているということです。

最大値は+26%、最小値は-17%でした。プラス30%以上やマイナス20%以下など極端なリターンがなくなっています。結果、最大と最小の差はかなり縮まっています。全体的に平均値の付近に集まっていますね。分布の形は保有期間が1年の時は平べったい丘のようでした。ですが、保有期間が5年となると山のようになっています。この傾向は保有期間が10年、15年と長くなるほど顕著です。棒は平均値の近くに集まっていき、全体の幅が小さくなります。分布は鋭い山のような形となり、シュッとしていきます。

つまり、保有期間が長くなるほど年率リターンは平均値に収束する。年率リターンのばらつきは小さくなる。このようなことがわかります。長期間保有するほどリスクは小さくなると言えるでしょう。

将来資産額のばらつき

先ほどの保有期間ごとの分布を1枚にまとめました。保有期間ごとに最大値、平均値、最小値をプロットしています。ウォール街のランダムウォーカーの図と似ています。ただ、この図は少し注意が必要です。リターンのばらつきを年率で見ているということです。このリターンは平均的に見て1年ごとに何%成長したかという意味です。年率リターンのばらつきは確かに保有期間が長くなるほど小さくなります。

ですが、将来の資産額のばらつきは保有期間が長くなるほど大きくなるのです。実際に見てみましょう。この図は先ほどの年率リターンを実際の資産額に変換しました。最初に100万円を投資した場合、実際の資産額が保有期間ごとにどうなったかということです。元のデータは先ほどと同じです。S&P500について過去94年分を使いました。

縦軸は年率リターンから資産額に変えました。リターンを年率という割合で見るか、資産額という絶対値で見るかという違いです。例えば、保有期間が1年の場合をご覧ください。最大値は150万円、平均値は108万円、最小値は50万円でした。年率リターンはどれも先ほどの図と一緒です。保有期間が5年の場合はどうでしょうか。最大値は320万円、平均値は136万円、最小値は40万円でした。こちらも年率リターンは先ほどと一緒です。どの保有期間でも年率リターンは先ほどと同じです。ただ、縦軸を年率リターンから資産額に変えただけです。

ですが、グラフを見た時の印象は大きく変わります。保有期間が長いほどばらつきは小さくなると言えるでしょうか。ばらつきは大きくなると答える人が多いでしょう。例えば、保有期間が1年の場合、最大と最小の差は100万円しかありません。100万円を投資したら、よくも悪くも50万円しか増減しなかったということです。ですが、保有期間が5年に延びると差は280万円に広がりました。良い時は資産が220万円も増え、悪い時は60万円も減りました。保有期間が10年、15年と長くなるほどこの差は広がっていきます。

つまり、保有期間が長くなるほど資産額のばらつきは大きくなるということです。長期投資はいつ投資するかによって投資後の資産額が大きく変わると言えるでしょう。したがって、資産額で見ると長期投資ほど結果はばらつき、リスクは大きくなります。

これが山崎氏の言う「長期投資でリスクは拡大する」という言葉の意味です。資産額のばらつきが大きくなるとどうなるでしょうか。もし仮に、投資の目的が子供の学費だとしましょう。大学の学費として20年後に400万円が必要と設定します。この図を見ると、100万円を投資すれば20年後の資産額の平均は375万円です。375万円あれば必要な学費400万円のうちほとんどをカバーできます。なので今100万円を投資しておけば、後のお金は自由に使っても良いと考える人がいるかもしれません。

ですが、このような考え方は少し危険です。先ほど説明したように、保有期間が長くなるほど将来の資産額のばらつきは大きくなります。20年後、資産は平均で315万円になりますが、最小値だと60万円まで減る可能性もあります。60万円だと必要な学費400万円に対して340万円も足りません。一般的なご家庭にとって、すぐに用意するのは難しい金額ですよね。実際に学費の必要なタイミングが近づいてきて「あれ、もしかして学費が足りないんじゃないだろうか?」なんてことになったら大変です。貯金でなんとかなれば良いですが、投資頼みで貯金が十分でなかったら厳しいでしょう。

もし足りない場合、子供に進学を諦めてもらうか、進路を変えてもらう必要もあるかもしれません。まさにリスクが高いと言えるでしょう。将来の資産額のばらつきが大きいとこのような事態になる可能性があります。目標金額の重要度が高く、投資以外の方法で挽回できない場合、目標を達成できない確率が高くなるということです。

一方で、投資期間が短い場合、ばらつく資産額の幅は小さいです。例えば1年間の投資なら、最大でも100万円しか変わりませんでした。したがって、もし投資の収益が未達になったとしても貯金から補填しやすいでしょう。

まとめると次のような投資は注意が必要です。

目標金額を達成する時期が重要

想定している保有期間が長い。

リターンがタブレした場合に補填できる貯金や収入が乏しい

このような条件において、長期投資はリスクが大きくなると言えます。逆にこれらの条件に当てはまらない場合、長期投資のメリットは大きいです。後ほど紹介するように、元本割れのリスクを減らせるためです。長期投資のメリットを最大限に活かせるのは次のような場合です。

目標金額を達成する時期の重要度が低い

リターンがタブレしても補填できる貯金や収入がある。このようになります。

目標金額の重要度が低いケースとしては、例えば老後資金が挙げられます。仮に投資で目標金額を達成できなかったとしても、その分長く働いたり、慎ましく暮らせば良いためです。また、投資とは別に貯金もしっかりしている人や、補填できるだけの収入がある人も長期投資は向いています。投資は余裕資金で行うという原理原則を守っていたら大丈夫でしょう。逆に、余裕のない資金で挑む投資において、長期投資はリスクが大きくなると言えます。

元本割れの確率

ここまで紹介した長期投資とリスクの関係をまとめると次のようになります。保有期間が長いほど年率リターンのばらつきは小さくなる。保有期間が長いほど将来の資産額のばらつきは大きくなる。こうですね。

さらに注目したいリスクとして「元本割れの確率」があります。元本割れの確率とは、先ほどの図で言うと下側の矢印の部分に当たります。保有期間が長くなるほど矢印は短くなっていますね。つまり、長期投資の方が元本割れの確率を減らせるということです。人間は損失を嫌いますから、元本割れしないことは非常に重要です。

ちなみに、年率リターンの平均値と標準偏差が分かると元本割れ確率を簡単に計算できます。使うのはExcelやGoogleスプレ

投稿者 Nakamura Shinichi