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結局S&P500、今後も大丈夫なのですか?
これまでに視聴者さんに一貫しておすすめしてきたのがS&P500への投資です。その見解に今も変化はありません。とはいえ、S&P500の将来に全く不安がないのかと思われる視聴者さんもいらっしゃるでしょう。このブログ記事では、S&P500への投資に不安になる理由を読み解きつつ、S&P500に投資していていいのかという視聴者さんの疑問に答えます。早速共に学んでいきましょう。
S&P500を簡単におさらい
他の記事でS&P500については何度もご紹介してきました。ですので、S&P500はどういうものかをごく簡単に振り返ります。
S&P500は米国企業の大型株500社で構成された株価指数です。時価総額の基準はマーケット環境によって随時変化します。リーマンショック以降はS&P500に採用される時価総額の基準が上昇し続けました。米国の株式市場全体が好調に推移していたからです。しかし、2023年1月4日にそれまでの基準より少し下がっています。こちらのチャートが示すように、2022年の米国株式市場が軟調だったからでしょう。
S&P500に採用されるための条件が他にもあります。適度な流動性が求められます。流動性とはマーケットで取引される株式の量です。不動株と呼ばれる市場で取引可能な株式が発行済み株式数の50%以上という要件があります。また、4四半期連続で黒字である必要があります。いくら知名度がある企業でも赤字企業はS&P500の仲間に入れてもらえないのです。
一方、財務の健全性は問われません。財務の健全性とは会社の健康状態のようなもので、その一つの指標が自己資本比率です。資本は会社が調達したお金と言い換えてもいいです。自己資本と他人資本から構成されます。他人資本は借金のことです。企業で言えば借り入れや社債でお金を調達したということです。これは決められたルールで利息の支払いや元本の返済が必要です。
自己資本は返済しなくていいお金です。代表的な例が株式を発行して投資家に買ってもらいお金を調達することです。借金と違い、決められたルールで返済する必要はありません。自己資本比率は自己資本を割る(自己資本+他人資本)×100で計算します。つまり、調達したお金のうち返済する必要がないお金の割合のことです。自己資本比率が低いということは借金が多いということですね。
人間の健康状態に例えるならば、生活習慣病の懸念があるようなものかもしれません。実は米国には総資産よりも借金の方が多い上場企業が珍しくありません。ドミノピザ(ティッカー:DPZ)がその一つです。しかし、ドミノピザはS&P500に採用されています。利益はちゃんと出していて赤字ではないからです。
S&P500はコンスタントに利益を出している米国の大企業の集まりと理解すればいいでしょう。
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なぜS&P500に不安を感じてしまうのか
コンスタントに利益を出している米国の大企業の集まりがS&P500でした。いわば、学校のテストで常に成績上位に入る人たちのようなものです。そんな成績優秀者たちになぜ投資家が不安を感じてしまうのか考えてみました。
不安に感じる理由の一つ目はS&P500といえども暴落があるからです。成績優秀者たちでも試験の問題が難しければ高得点を取れません。それと同じようなものでしょうか。
実は暴落の定義ははっきりしていません。マーケットが短期間に大きく下落することを暴落と言いますが、どこまで下がれば暴落なのかという水準がはっきり決まっているわけではありません。過去に暴落と呼ばれた下落局面をS&P500で振り返ります。
このチャートは1999年から2021年の約22年間のS&P500の推移です。3つ赤で囲んだところは大きく下げているのがわかりますね。一番左はITバブル崩壊と言われています。当時流行したインターネット関連企業の株バブルがはじけたことによるものです。高値から40%以上暴落しました。株価が再び上昇に転じるまでは3年かかっています。
真ん中はリーマンショックです。リーマンショックでは高値から50%以上下落しています。しかもこの時は対米ドルで円高が大きく進みました。ドル円チャートをご覧ください。赤で囲んだ期間がリーマンショックからの円高局面です。この期間にS&P500に投資していたら、S&P500で50%下がり、さらに為替で35%下がったことになります。日本にいてS&P500へ投資していたら、でも足も出ないような状況でした。
再びS&P500のチャートです。一番右側の赤で囲んだ部分はコロナショックです。1ヶ月でS&P500指数は約34%下落しました。コロナショックは下落のスピードが速かったことが特徴です。それまでの上昇が大きかったので下げも早かったのです。
それぞれの暴落局面でS&P500への投資を続けられるのかと考えてしまうのは無理ありません。500銘柄に分散していても下がる時は下がってしまいます。特にITバブルの時のようにダラダラ下がり続ける3年は非常に長く感じられます。いつになったら上向いてくるんだろうと思う日々が3年続くわけです。自分がやってることが間違っているんじゃないかと不安に感じることでしょう。しかし赤で囲んだ部分のその後を改めて確認しましょう。再び上昇局面が来ていますね。優秀なインデックスは暴落があってもいずれ値が戻るのです。この歴史を踏まえて時間を味方にのんびり続けたいのがS&P500への投資です。ぜひ知っておきたいことです。
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S&P500の分散と偏り
不安に感じる理由の二つ目はS&P500は分散されているとはいえ偏りがあることも事実だからです。
こちらをご覧ください。バンガードS&P500 ETF(ティッカー:VOO)を構成する上位10銘柄です。VOOはS&P500をベースとした代表的な米国ETFでした。S&P500は500社で構成されています。しかし、この表に示した上位10銘柄で全体の4分の1以上を占めます。つまり、500社に分散されているとはいえ、その構成比には偏りがあります。構成比はウェイトとも言います。
S&P500は時価総額が大きい企業のウェイトが高くなる設計をしています。時価総額過剰平均と言います。AppleやMicrosoftの時価総額が他より飛び抜けて大きいということですね。ウェイトが高い銘柄の下落が大きいとインデックスにもネガティブに寄与します。
チャートで確認しましょう。赤がS&P500、水色がApple、紫がMicrosoftです。期間は1年です。水色と紫が大きく下落している局面では赤もそれなりに下げていますね。S&P500は個別株で構成されます。ですから株式インデックスといえど個別株の動きの影響をゼロにすることはできません。特にウェイトが高い銘柄の影響が大きくなることがこのチャートからわかります。
一方、赤のS&P500の動きは水色や紫よりマイルドです。500社が集まっていることでウェイトが高い銘柄の値動きを適度に吸収する効果があります。景気のサイクルがある以上、どんな企業の株価も上がったり下がったりします。AppleやMicrosoftも同様です。しかし、どちらも優秀な企業ですから水色と紫は値を戻しています。そうなればいずれS&P500も値を戻すというわけです。
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S&P500以外のものが良さそうに見える時
不安に感じる理由の三つ目はS&P500以外のものが良さそうに見える時があることです。
投資の初心者さんであればS&P500連動商品をコツコツ買いましょう。無理にS&P500以外に手を出す必要はありませんと他の記事でも申し上げています。S&P500は株式の集まりですから値動きはあります。上がったり下がったりします。それでも長く投資し続けていれば右肩上がりになる可能性が高い方法です。この見解がぶれることはありません。
しかし、S&P500だけに投資をし続けるのは実はとても退屈かもしれません。自動的に積立設定をしていると本当に何もすることがありません。その退屈さが場合によっては人を不安にさせるのです。投資を始めて興味を持ち経済ニュースを見るようになるかもしれません。情報を求めてSNSのアカウントを作ってみたりするかもしれません。本を読んでみようと思うかもしれません。どれも知識を増やすためには前向きなことです。
しかし、時にそれらが視聴者さんを迷い道に誘います。インプットされる情報が多くなるとS&P500より輝いて見えるものが時に視界に入ってくるからです。それは本当に輝いているゴールドかもしれません。AI関連銘柄かもしれません。新興株株式インデックスかもしれません。レバレッジを利かした商品かもしれません。いずれにしろその時にS&P500よりパフォーマンスが良いものでしょう。だからこそ話題になるのです。
こちらのチャートは赤がS&P500、水色がインドの株価指数センセックスです。期間は5年です。赤で囲んだ直近約1年はセンセックスが強いですね。しかし、その前はS&P500の方が概ね強く推移してきたことが分かります。お金は投資家がその時一番リターンを取れそうだと考えるところに向きます。
一番リターンが取れそうなところが分かればいいですよね。ですが、個人投資家にはそれが非常に難しいです。機関投資家と呼ばれる運用のプロは一番リターンを取れそうなところを知るために莫大なマンパワーとお金を使っています。同じことを私たち個人投資家がやるのはセンスとタイミングが大事になります。人によってはうまくいかずお金を減らしてしまうでしょう。
S&P500への投資をおすすめするのは退屈になるぐらい何もすることがないからです。ひたすら単調に続けるだけで時間が経過すれば資産が増えていると実感できることが多いからです。誰もが忙しい時代です。初めての資産運用は誰でもできることから楽に始めるといいでしょう。S&P500への投資に退屈を感じたら投資以外のことで楽しむのがベストです。入金したら忘れてしまえるぐらいでちょうどいいのです。
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S&P500は今後も大丈夫なのか?
本題に入ります。S&P500は今後も大丈夫かがこのブログ記事のテーマです。結論から言えば、S&P500は今後も大丈夫ですと言っても常にポジティブに大丈夫なわけではありません。S&P500と言えるもんで動きがあることはすでにご理解いただいているでしょう。過去には何度も暴落といえる大きな下げもありました。そういうことは今後ももちろんあります。ないと保証することは誰もできません。
とはいえ、このブログ記事でも申し上げたように、値を下げてもまたいずれ戻すのがS&P500です。株式投資は企業の継続的な業績成長を前提にしています。それらの中から優秀な企業を500社集めているのがS&P500でした。優秀でなければS&P500から落ちこぼれていくのです。ですから結果的に継続的に業績成長をしていく企業だけがS&P500に存在できます。
景気にはサイクルがありますからS&P500採用企業であっても業績が冴えない時があります。それは試験の成績が常に良好な人でも試験の日に体調が悪ければいい点も取れないのと同じです。しかし、優秀な企業はいずれ業績を回復させます。一方、冴えない業績が続く銘柄はS&P500採用ルールに基づいて除外されます。代わりに採用される銘柄があります。時間の経過とともにビジネスモデルが陳腐化したりして業績が低迷するような企業はS&P500には残留できないような仕組みです。いい新陳代謝があるということですね。
しかしながら、その新陳代謝を個人投資家が一人でやるのは容易ではありません。個別銘柄500社以上の業績、取引量、不動株比率といった数字を1人で追いかけるのは気が遠くなりますね。プロの力を借りた方が断然楽です。それがS&P500への投資をおすすめする一番の理由です。
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S&P500への投資をおすすめする理由
S&P500への投資をおすすめする理由が他にもあります。NISA制度などのおかげもあり、日本で投資を始める人が増えてきました。インデックス投資の良さを実感する人が増えてきています。その結果、S&P500の知名度も上がりました。S&P500連動商品の品揃えが充実しました。近年は日本の個人投資家にとってS&P500への投資に追い風が吹いています。
S&P500連動商品にいい意味でのコスト競争が存在しています。S&P500を名乗る商品であればどれであってもその値動きはS&P500に倣うことになります。経費率や信託報酬率の違いがパフォーマンスの違いを生みます。それらが低い方が高パフォーマンスになります。
VOOの経費率は0.03%で非常に低いです。しかし、米国ETFであるVOOを取引するためには為替を避けて通れません。為替の手数料は証券会社によってまちまちですが、平均的には0.25%でしょうか。一方、円建てのS&P500連動商品の信託報酬率は0.1%切るものが今はあります。コストは円建ての商品でも米国ETFと遜色ない水準になっています。投資信託であれば毎日100円買うといった使い方もできて、気軽にS&P500へ投資できるようになりました。円建ての商品であれば米国株式取引口座の開設も不要です。むしろ日本にいるからこそのアドバンテージです。
2024年にスタートする新しいNISA、日本の個人投資家に追い風です。S&P500への投資は長期間続けることに意義があります。非課税保有期間が無期限になったことはまさに追い風です。コツコツ気長に投資を続けたい人にとって歓迎すべき国の支援です。
一つご指摘を受けるかもしれません。低コストで買いやすい商品が増えたこと、非課税投資を長期間続けやすくなったことはS&P500への投資が大丈夫ということと直接イコールではありません。買いやすい